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特集【第4回】レンズコート開発エンジニアインタビュー
『キズ』に強く『ホコリ・花粉』も付きにくい、耐久性強化コーティング スーパーレジスタンスコート完成

※「スーパーレジスタンスコート」は販売を終了しております。さらに快適な使い心地にグレードアップした後継機種、『SRC2 UVP-BR』の詳細は、こちらをご覧ください。

メガネを買うときにレンズのコートのことを全く気にしていなかった私ですが、これまでの話を聞いて、たった3~4マイクロメートルの薄い膜に隠された素晴らしい技術を知りました。
それでは、12月に新たに発売されたスーパーレジスタンスコートは、4つの特長を持つ「耐久性強化コーティング」とのことですが、どのような特長を持つコートなのか、教えてください。

(野口さん)
まず防傷性の向上、広帯域での低反射、拭き性の向上、そして今回付加した大きな特長にホコリを付きにくくする静電気防止があります。

「防傷性」とか「広帯域での低反射」など、耳慣れない言葉に頭の中が「?」の私ですが、中学時代、使っていたガラスレンズのメガネを机から落として割ってしまった経験があります。防傷性というのは、メガネを落としてもレンズが割れないということですか?

(野口さん)
防傷性とは、キズが付きにくい性能のことです。スーパーレジスタンスコートは、表面硬度を高め、キズの付きにくさを強化しています。

セイコーエプソン株式会社 西本さん

当社の製品はすべてが防傷性能を備えていますが、スーパーレジスタンスコートは最上位の防傷性能を発揮します。
また、ガラスレンズは衝撃で破損することがありますが、現在主流のプラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて衝撃に強いので、机から落とした位では割れませんよ(笑)
スーパーレジスタンスコートにはさらに衝撃吸収機能が付いていますので、衝撃にも強くなっています。

(西本さん)
次に、「広帯域での低反射」というのはですね、例えばレンズを机の上に置いて、蛍光灯の反射を上から見て頂くと、何色に見えますか?

あれ?白く見えないんですね。緑に見えます。

垂直入射

(西本さん)
これは反射防止膜と言って、光の反射を抑えています。
例えば、写真に撮った時にメガネがギラギラと写らないようにしているわけです。
また、光が干渉して出る色(干渉色)にもこだわっており、わざと緑や青といった清潔感がある色をつけています。
では、斜めから見ると何色に見えますか?

右のスーパーレジスタンスコートのレンズは緑のままですが、左のレンズは紫に見えます。

入射角30°

(西本さん)
従来のコートは見る角度によって赤みが感じられましたが、スーパーレジスタンスコートは赤みを軽減させ、斜めから見ても膜設計通り緑色に見えるようにしました。
色は各メーカーこだわりがあって、SEIKOはほとんどのレンズで緑系に調整しています。
同じ色を採用することで、レンズの掛け替え時にも違和感なく掛けて頂けます。
この反射防止膜の働きによって、レンズに斜めから光が当たっても、反射を抑えてすっきりとした視界を保つことができるのです。

メガネのレンズが反射の色にまでこだわって作られているなんて、知りませんでした!その他の特長はどのようなことでしょうか?

(西本さん)
静電気防止機能による、拭き性の向上ですね。
今回付加した大きな特長に、ホコリを付きにくくする機能があります。
プラスチックは帯電しやすい物質です。プラスチックという素材は、そのほとんどが電気を通さない、絶縁体です。一度発生した電気は絶縁体の表面で行き場がないので、そこに長く溜まっています。これが帯電、静電気の正体なんです。

静電気はホコリやゴミ、花粉を吸い寄せます。また、拭いても拭いても吸い寄せてしまいますので、お困りの方が多かったわけです。

スーパーレジスタンスコートでは静電気を逃す膜(導電層)を導入し、拭き取りの際に発生しやすい静電気を抑え、ホコリやゴミ、花粉などを付きにくくしました。これにより拭き取りの際のゴミの再付着が無くなり、汚れが取りやすくなりました。また、拭き取り回数が減ることで、拭き取りによるキズが付きにくくなるメリットもあります。

私自身、出先でよく手持ちのハンドタオルでメガネのレンズを拭いてしまうことがあって、タオルのケバケバがレンズに付いて、なかなか取れないのですが、それは静電気の仕業だったんですね。

(西本さん)
こちらをご覧ください。ここに発砲スチロールの細かくしたものが入った容器があります。レンズを拭いて発泡スチロールの入った容器に近づけると、今までのレンズは静電気でこれだけついてしまいます。

今までのレンズの写真

スーパーレジスタンスコートのレンズは、発砲スチロールがご覧の通りつきませんし、ついても軽く振るだけで、落とすことができます。

スーパーレジスタンスコートのレンズの写真

こんなに違うんですね!この時期、メガネについた花粉も簡単に落とせそうですね。
メガネユーザーにとって魅力的な特長ばかりのコートですが、そんなスーパーレジスタンスコートを開発するに至った背景や、きっかけは何でしょうか?

(野口さん)
一般ユーザーの方を対象に、メガネレンズの性能で一番気になることをリサーチすると、多くの方が「キズの付きにくさ」や「耐久性」をあげております。一方この2つの要素について、あまり満足していないという結果も同時に出ていました。
そこで従来のコートよりも防傷性を相当良くし、耐久性を強化できれば皆さんに喜んでいただけるのではないかと思い、開発を始めました。

ユーザーのレンズ性能に対する意識
ユーザーは「耐久性」や「キズの付きにくさ」を重視しているが、その満足度は高くない
このグラフは、各項目の回答(ポイント調査)を加重平均値で表しています。当社調査トレンドウォッチアンケート「レンズについて」2008年実施(回答数1913人)
ポイントの表

開発するにあたって、課題や苦労したところはどんなことでしたか?

(野口さん)
主にレンズのコートは4つの膜を重ねて性能を出しています。
その4つの膜とは上から表面処理膜、反射防止膜、ハードコート膜、プライマー膜です。
一つの膜を向上させるだけでも、コートの性能は大きく改善しますが、今回は今までにない耐久性を実現することを課題にしていましたので、4つ全ての膜を、見直すことを決めました。

一旦、今までの考えをリセットして根本から考え直した訳ですが、どういう組合せにすれば4つの膜が相乗効果を発揮してくれるのか?今までにないコートを作り出せるのか?その答えを導き出すことが大変でした。

(西本さん)
私は静電気防止機能ですね。
語りだすと長くなるのですが(笑)、このコートには静電気を溜め込まないように、電気を流す層を入れています。透明で電気を流すことができる材料として、よく用いられるのは酸化インジウムという物質です。酸化インジウムとは液晶ディスプレイなどにも使われていますが、我々はさらに性能向上を目指して他の材料についても実験を行いました。メガネに要求される透明度、耐久性、傷つきにくさなどをクリアできる材料を色々実験する中で、今回スーパーレジスタンスコートのための新しい材料を開発することが出来ました。これはセイコーエプソンの半導体技術で培われた導電性薄膜技術を応用したものです。材料の中身については特許を申請中なので詳しくはいえませんが、いままでの静電気防止膜を上回る性能を出せたと思います。

その材料って何でしょう?気になりますね!ところで、スーパーレジスタンスコートはどんな方に使ってほしいですか?

(野口さん)
当然ですが、メガネを使うすべての人に使って欲しいですね。また、メガネを大切に扱いたい方にはお勧めのコートです。

ところで素人質問で申し訳ありませんが、こんなに凄いスーパーレジスタンスコートは、すでに持っているメガネのレンズにも後からコーティングしてもらえるのですか?

(野口さん)
メガネを新調する時のみ、コーティングできます。
すでにあるメガネにスーパーレジスタンスコートをコーティングする場合、既存のコーティングを薬剤などに何度もつけてはがし、1からコーティングすることになります。しかし、すでに使用しているレンズには目に見えないキズが付いていたり、レンズの素材が変形していたりして、出荷した時とは同じ状態にないと思われます。そのような理由から、既存のメガネのレンズへのコーティングは対応していないんです。

花粉症の時期に、スーパーレジスタンスコートの静電気防止機能は魅力ですが、マスク着用で発生するくもりも一緒に防止できるとうれしいのですが、くもり止めのコートも一緒にかけることはできるのでしょうか?

(野口さん)
スーパーレジスタンスコートは、表面処理膜に汚れをスムーズに拭くための「汚れ防止コート」を採用しています。冒頭の部分でもお話させていただきましたが、「汚れ防止コート」と「くもり止めコート」は相反する性能なので、それはできません。

そうですか。それならばレンズの内側がくもり防止コート、外側が汚れ防止コートにはできませんか?花粉症の季節には、マスクをするとメガネが曇ってしまって困りますが、曇るのはメガネのレンズの内側なので、そんなことができたら便利なのですが。

(野口さん)
私もその経験があるので「そういうことができたらいいなぁ」、「開発できたらなぁ」とは思っています。でも今のところはまだ実現できていませんね。

スーパーレジスタンスコートはどちらで購入できるのですか?

(西本さん)
全国のほとんどの眼鏡店で購入できると思います。お店の方に「スーパーレジスタンスコート」の名前を忘れずに伝えて下さいね。

最後に、今後はどのようなコーティングを開発していこうと考えていますか?

(野口さん)
これからもお客様から最も要望の強い「キズ付きにくさ」についてはもっともっと追求していきたいですね。
また、逆に我々の方からお客様へ全く新しい発想のコートを発信して喜んでいただけるようにしたいですね。

(西本さん)
「全くキズが付かない」ということを目標に開発を進めて、最終的にそういう商品が作れたらと思っています。
これは我々の永遠の課題ですね。

ありがとうございました。

メガネを買うときにレンズのコーティングのことを全く気にしていなかった私ですが、今回の話を聞いて、たった3~4マイクロメートルの薄い膜に隠された素晴らしい技術を知りました!そして、この素晴らしい技術をもっと沢山の人に知ってもらいたいと思いました。

(インタビュー/記事作成 担当:豊島 キョウ子 さん)

いかがでしたか?
快適なメガネの使い心地は、レンズ本体の性能だけではなく、コートの機能や性能も重要な要素となることがお分かり頂けたでしょうか。
お客様に、安心して、気持ちよくメガネをお使いいただきたいという思いから生まれたこの「スーパーレジスタンスコート」。
レンズによくキズを付けてしまいお困りの方、レンズを拭いてもホコリや花粉が取れくいとお悩みの方、などにぜひお薦めしたいコートです!
次回メガネを新調するときには、是非この記事のことを思い出してコート選びをしてみてくださいね。

[2010.2.25 UP]

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