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目とメガネに関する豆知識
小さなお子さんがいるご家庭では、お子さんの健康が気にかかることがいくつもあると思います。 特に目に関するケガや病気、もしくは視力や見え方といったものについては、まだ自分のことをよく説明できないお子さんだけに、 不安や心配もひとしおといった方も多いのではないかと思います。

そこで今回の豆知識のテーマは

【 斜視と斜位 】

についてです。
早期発見、治療によってより改善されるものですので、この機会にぜひ正しい知識を知っていただきたいと思います。


■1.人間の目はもともと真ん中にあるわけではない?


みなさんは、自分が眠っているとき目はどちらを向いていると思いますか?
目の位置は、眼球を動かす6つの外眼筋の緊張と、眼球の周りの組織の状態とで決まります。ですから、目の本来の位置は、 必ずしもど真ん中にあるというわけではないのです。

目が何かを見ようとする際、右眼から入る像と左眼から入る像を、脳で統合するときに、目のずれを微調整してど真ん中に持ってきます。

ですから、何も見えない真っ暗なところにいたり、意識がないときの目の位置が、 本来その人が持っている目の位置(生理的安静位)ということになります。



■2.距離や深さを測る、両眼視


目の位置がど真ん中にあるといっても、左右眼の網膜に映る像は、それぞれ少し異なる角度から見た像になります。
両目で見た像が脳(後頭葉)に行き、その見え方の差(専門用語では視差といいます)をそこで計算して、 距離感や立体感を感じているのです。
この機能を、両眼視機能といい、この時に働く後頭葉の神経細胞を「両眼視細胞」といいます。

この両眼視細胞は、生まれたての時点ではただの視覚系の神経細胞であり、性質が定まっていません。 だいたい2歳までの視覚体験の中で、両眼でものを見るという性質を獲得していくのです。 この機能は成長するにつれて獲得しにくくなり、成人になってからは獲得することはできません。



■3. 斜視と斜位、どうちがうの?


斜視とは、何らかの原因で両眼視細胞が不成立、不十分になる状態のことです。見かけの問題ではありません。

この何らかの原因には、うまれつき目の位置がずれていたり、目の動きが悪かったり、眼球自体の病気があります。
このうち実際は、目の位置がずれているために両眼視細胞が発達しなかったものを斜視(狭義)という場合が多いです。


斜視では片目だけでものを見ています。見ていない方の目が、もし外側にずれていれば外斜視、内側なら内斜視、 上下なら上斜視、下斜視と呼びます。この見ていない方の目は、しばしば視力発達も悪くなります(弱視)。
また、斜視の状態を避けるために首曲げをしていることもあります(眼性斜頸)。

さて、生理的安静位(本来その人が持っている目の位置)が外側にあったり内側にあったりする場合、これは斜視と呼ぶのでしょうか?  この場合、両眼視ができていれば、それぞれ外斜位、内斜位ということになります。

整理しますと、斜視は両眼視が出来ていない目の状態で、片目だけでものを見ています。
斜位は両眼視はできていますが、片目を覆い隠すと、両眼視がくずれもう片方の目の位置が上下左右にずれてしまいます。

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このように、斜視と斜位の差は定義上は明らかですが、実際はどちらなのかを判断するには、専門の眼科医でないと区別がつきません。

斜視の早期発見はよい治療結果をもたらしますので、学校の眼科検診においては、 以前は結膜炎などを見つけることに主眼が置かれていましたが、最近は斜視をうまく発見することが重要視されています。
ただし、時々斜視になる例(多いのは間欠性外斜視)や、わずかな眼位変化しかない斜視は、見るだけ(視診)では不十分で、 眼科での眼位や両眼視の詳しい検査が必要となります。



■4. 斜視かもしれない、と思ったら


斜視かどうかは、外見的な目の位置だけでは判定できないと書きました。
事実、日本人の乳幼児は両目の目頭の間の距離が相対的に長く、実際は斜視ではないのに、一見内斜視に見えるなど、 偽斜視といわれる状態に見えることもあります。

一方で、遠視に伴う調節性内斜視である場合、乳児期から眼鏡やコンタクトレンズでの矯正が必要です。 また、先天性内斜視はできるだけ早い時期(可能なら1歳未満)から、目の位置ずれを手術的に治す必要があったりします。
また、間欠性外斜視は、以前は手術は急ぐ必要がないという意見が多かったのですが、 パソコンなどの近業が続くと強い眼精疲労に悩まされる事実から、小児期に手術治療を受けて矯正しておいたほうがいいという意見を持つ医師が、最近は増えています。
つまり、治療や矯正が必要な場合、できるだけ早い時期からのスタートが望ましいということが言えるでしょう。

小児斜視に関しては、それを専門とする眼科医が比較的少なく、かつ、専門としている眼科医でも意見が異なることがよくあります。
斜視が疑われたら、早めに専門家を探して受診すべきですし、可能なら2人以上の医師の意見を聞くことをおすすめします。



監修:医療法人社団 済安堂 井上眼科病院院長 若倉雅登(2008年)