普段はあまり意識しない方も多いかもしれませんが、コーティングは私たちが使っているメガネに、さまざまな便利な機能を付加してくれています。
汚れ防止、青色光カット、キズに強いもの、静電気防止、抗菌など、その機能は多岐に渡ります。
今回の豆知識は、そんなレンズの「コーティング」について紹介します。
■1.そもそもコーティングとは?
コーティングとは、メガネを使う人がレンズを取り扱いやすいように、また快適な視界を得られるように、レンズの表面に薄い膜を作ることです。 メガネレンズの表面は、実は何層ものコーティングが施されています。
▼1.防傷機能コート
レンズの表面硬度を高め、防傷機能を向上させたコーティング。
セイコーのレンズコーティング『SRC2 UVP-BR』、『SRC2 UVP』は最上位の防傷機能を発揮します。
▼2.撥水・防汚機能コート
レンズ表面の撥水・撥油機能を向上させたコーティング。レンズの汚れの原因となる皮脂や指紋、油膜、化粧品等をスムーズに拭き取ることができ、メガネのケアが格段に楽になります。
セイコーの全レンズに標準装備されています。
▼3.抗菌機能コート
撥水コートと反射防止コートの間に銀イオン等を含んだ抗菌コート層を挟むことで、レンズ表面に付着した細菌の増殖を抑制するコーティング。
▼4.くもり防止コート
温度差のある場所へ移動することで生じるレンズのくもりを防ぎます。メガネとマスクを同時に使用する時にもおススメです。
フォグレスコート:専用のメンテナンスクリーナ―を塗布することで、繰り返し表面を拭いても高い防曇性を持続することができるレンズコーティング
フォグレスケアフリーコート:高い防曇性を持続するための特別なメンテナンスが不要 & 拭き心地も抜群。「吸水性」「滑りやすさ」を併せ持つ、メンテナンスが楽なレンズコーティング
▼5.静電気防止コート
通常のプラスチックレンズは静電気が溜まりやすく、ホコリや花粉を吸い付けます。
レンズ拭き取り時などの静電気発生を抑え、ホコリや花粉を付きにくすることで、拭き取りも簡単になるコーティングです。
▼6.青色光カットコート(BR*コート) *BR: Blue light Reduction(青色光低減 の略)
肉眼で確認できる光の中で、波長の短い領域を青色光と呼びます。 エネルギーが強く水晶体内などで散乱しやすい性質をもつ青色光は、まぶしさやちらつきを感じる原因となります。
青色光カットコートは、青色光を約11% *1 (平均カット率では30% *2)反射してカットすることにより、まぶしさやちらつきを軽減するコーティングです。
*1 数値の算出は「日本医用光学機器工業会 青色光カットに関するガイドライン」に準ずる
*2 青色光(波長域:380nm~500nm)の分光透過率の平均値を1から減じた値
▼7.近赤外線カットコート
『美ケアコートUVP』は、肌のしわ、たるみの一因と言われ、皮膚の奥深くまで届く近赤外線を約50%カットするコーティングです。
▼8.裏面反射UVカットコート
従来のUVカットレンズはレンズの表面で透過する光についてUVカットすることを目的としていました。
セイコーの『UVプロテクトプラス(UVP)』は裏面で反射する紫外線を95%カットし、通常のUVカット機能にプラスして更なる紫外線カット効果を発揮するコーティングです。
●セイコーのレンズコーティング機能一覧はこちら
■2.コーティングされたレンズの取り扱い、大丈夫ですか?
このように、コーティングにはさまざまな種類があり、一枚のレンズに何層ものコーティングがかけられていることがあります。
レンズのコーティングはとても繊細なもの。その性質をよく理解して、正しい取り扱いを知っておきたいものです。
▼1.お風呂に入るとき、メガネをかけて入っても大丈夫?
お風呂に入るとき、メガネを外すとまわりが見えなくて、滑って転んでしまいそうで怖いですよね。でも、温度・湿度の高いお風呂にメガネを持って入っても大丈夫なのでしょうか?
答えはNO。
温めてしまうと、コーティング部分にシワが寄ったり、ひび割れができてしまうことがあるんです。 これは、コーティングとレンズの「膨張率」が関係しています。
一般的なハードマルチコートレンズは、≪無機物≫である反射防止の「マルチコート」と ≪有機複合物≫であるキズ防止の「ハードコート・レンズ生地」から出来ています。
ところが、この「マルチコート(=無機物)」と、「ハードコート・レンズ生地 (=有機複合物)」とでは、その伸縮性(膨張率)に約200倍もの違いがあるのです。
つまり、このように≪無機物≫と≪有機複合物≫とが合体したハードマルチコートレンズに強い熱や圧力がかかると、図のように「ハードコート・レンズ生地」は膨張します。
しかし、伸縮性の低い「マルチコート」は、「ハードコート・レンズ生地」の伸びについていけません。そこで、マルチコートにクラック(細かい無数のひび割れ)が生じてしまうのです。
特に、メガネを湯船に入れたり、サウナに持ち込むのは絶対NG。 お湯で洗うのも避けてください。また、お風呂のように温度が高い場所は、レンズだけでなくフレームにも影響がでることがあります。例えばセルフレームなどは、お湯をくぐるとツヤがなくなってしまうこともあります。
同じ理由で、夏場の日中温度が高くなる車のダッシュボードなどにメガネを置きっぱなしにするのもやめましょう。
レンズもフレームも、お風呂は大敵。温泉地の露天風呂に入ったりすると、ついつい周りの景色見たさにメガネを持って入りたくなりますが、そこは我慢してくださいね。
▼2.レンズに水がついてしまったら?
もしメガネが濡れてしまったら、なるべく早めに拭く。これが鉄則です。
水に濡れてしまうとどうしてもレンズに水垢が付いてしまいますが、この水垢、そのまま放置しておくと跡が取れなくなってしまうこともあります。
またレンズの汚れが激しい場合、そのまま空拭きをするとレンズにキズが生じる恐れがあります。 そのため、まずは水で汚れを洗い流し、油成分等が落ちない場合は中性洗剤(アルカリ成分が高い洗剤を使用すると、コート膜を劣化させる原因となりますので、ご使用は避けて下さい)を薄めて洗って下さい。
水分はティッシュ等を軽く当てて拭き取ってくださいね。
いかがでしたか?
レンズのコーティングについて、興味を持っていただけたでしょうか。
ふだん何気なく使っているメガネ。コーティングによってこんなにたくさんの機能がついているんですね。
大事なメガネのレンズを守るために、コーティングの機能を上手に活かして、より快適な視生活を送ってみてはいかがでしょう。