みなさんは「アレルギー」と呼ばれる症状をいくつ知っていますか?
花粉症はもちろん「花粉アレルギー」。「卵アレルギー」「そばアレルギー」など食品系のアレルギーもたくさんありますね。アトピー性皮膚炎、気管支喘息の原因もアレルギーがほとんどとされています。また、「金属アレルギー」というのもご存知かと思います。
今回は、メガネユーザーとしては特に気になる、この「金属アレルギー」をとりあげてみようと思います。
■1.金属アレルギーとは?
アクセサリーやメガネなどをくりかえし身に付けていると、その金属が汗や体液などでわずかながら溶け出し、イオン化した金属が身体に入り込みます。その後、同じ金属に触れると、拒絶反応を起こして、皮膚の表面がかぶれる場合があります(アレルギー性接触皮膚炎)。これを金属アレルギーと呼びます。金属アレルギーは花粉症と同じく、人間がもつ抗体反応の一種です。
詳しく説明しますと、ある金属イオンが体内に吸収された場合、その金属イオンを滅殺しようとして体が抗体を作り、次回に同じ金属イオンが体内に吸収されると、前回の侵入時に用意された抗体が金属イオンと激しく反応し、その際に体に腫れやかゆみ・痛みを発病するというもので、ちょうど病原体が体内に進入したときに白血球がその病原体と反応して、腫れや膿みといった炎症を起こすのと同じような作用です。
指輪、ネックレスなど、皮膚に長時間触れたままでいるアクセサリーは、金属アレルギーを起こす原因となりやすいものです。またメガネのフレームも、素材によっては金属アレルギーの原因となる場合があります。
■2.金属アレルギーを起こす金属は?
「金属アレルギー」を引き起こしやすい金属としては「ニッケル」「コバルト」「スズ」「水銀」「パラジウム」「クロム」等で、反対に、引き起こしにくい(=イオン化しにくい(溶け出しにくい))といわれるのは「金」や「チタン」です。
金属アレルギーを引き起こしやすい金属のうち、「ニッケル」は、メガネとも関係の深い金属です。長い間、ニッケルはメガネフレーム素材においては合金の形で、またメッキ材や金メッキ等の下地メッキ材として用いられてきました。
ニッケルは、他の金属に比べて溶けだしやすい性質を持っているので、ニッケルを身につけている人が汗をかくと、汗に含まれる塩素イオンの作用でより溶けだしやすくなり、アレルギーの原因となりやすいのです。しかし、最近ではアレルギー対策として、ニッケルを含まない素材やメッキの下地にニッケルを用いない「ニッケルフリー」の商品が多く出回っています。
どの金属に反応しやすいかは個人差もありますので、金属アレルギーの恐れがある方は、皮膚科を受診して医師に相談の上、パッチテストを受けるのがおすすめです。自分にどの金属アレルギーがあるかを知っておけば、メガネやアクセサリーを購入する際に、自分がどの金属を避ければよいのか事前に把握しておくことができます。
■3.フレーム素材いろいろ
フレームは使用される素材によって大きく次の4種類に分けられます。
▼1.メタルフレーム
チタン、合金など金属材を使ったフレームを総称してこう呼んでいます。
特に金属アレルギーが心配な方は、メタルフレームを選ぶ際、どのような金属材やメッキが使われているのか?を、店員さんに質問してよく確認することが大切ですね。
軽くて丈夫なチタン、繊細な彫りまで可能な合金、いずれにしても硬質な感じが素材としての特徴です。クールな印象を醸し出してくれる素材でもあります。最近では表面仕上げの技術向上によって、カラーリングも多様になっています。
▼2.プラスチックフレーム
非金属のプラスチック素材のフレーム。セルフレームといったほうが馴染みがあるかもしれませんが、現在はセルロイドからアセテートなどに替わっているので、プラスチックフレームとよぶのが一般的です。
セルロイドは、衝撃に強く、腰が強いのが特長ですが、燃えやすく、170℃程度以上の高温に達すると発火する性質もあります。
アセテートは見た目はセルロイドと非常によく似ていて、弾力性は劣りますが、セルロイドよりも軽くて燃えにくいのが特徴です。
またセルロイドもプラスチックも、メタルに比べてあたたかみを感じる素材といえます。生地の色や柄、その混ざり具合、あるいは透け感や摺りガラスのようなフロスト感など、バリエーションが多様です。
▼3.無垢フレーム
18K、14Kホワイトゴールド、プラチナなど貴金属素材ならではの希少性をもっています。
チタンなどに比べると重量はあるものの、肌あたりのやさしさと装飾性を兼ね備えた素材としては秀逸です。
もちろんムク材を高価な装飾品とみるかマテリアルのひとつとしてみるか、価値観の分かれ目がデザインの分かれ目でもあり、ゴージャスなものだけでなくすっきりとしたシャープな印象のデザインのものもあります。
▼4.その他
これらの他にも、メタルとプラスチック、メタルと18Kのコンビなど異素材の組合せや、新素材も次々と開発されています。
また天然素材である鼈甲は、ワシントン条約によって輸入できなくなってからより貴重な素材になっており、軽くてしなやかな強さ、奥深い輝きとつやは工芸品としての風格があります。
■4.進化しつづけるフレーム素材
メガネフレームの素材も、日々進化しています。中でも特に今注目されている素材はこの2つでしょう。
▼1.純チタン
現在、フレーム素材として主流となっているのは、やはりチタンでしょう。
チタン素材はアレルギーなど人体への害が少ないことでも知られ、重さは鉄の約半分。ステンレスよりも軽く、柔らかい。おまけに、海水の中に浸けておいても錆びず、変色することもありません。
「軽い」「強い」「錆びない」がチタンの長所です。
ロー付け(金属と金属を蝋で接合すること)や表面処理が難しい素材でしたが、現在では高度な技術で加工ができるようになりました。
純チタンは既に高機能素材として一般的に普及しています。
▼2.チタン合金
チタン合金としてポピュラーなのがβチタン(Ti、アルミニウム、バナジウム他)です。耐久性に優れるため細くて軽いデザインが可能となり、バネ性が向上しました。チタン合金の開発により、形状記憶合金(バネ性)や生体用金属(生体適合性)など多くの新素材が誕生しています。
その他にもメガネフレームの素材として、アルミニウム、カーボン等が挙げられます。
直接肌に触れる機会の多いメガネ。新しいメガネを探す際、まずその見た目・デザインに注目しがちですが、その‛素材の性質’にも目を向けてみると、より快適な自分だけのメガネに出会えるかもしれませんよ。