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特集【第3回】レンズ開発プロジェクトリーダーインタビュー
~「1度」「1mm」にこだわる~最高峰カスタムメイド遠近両用レンズ セイコースペリオールP-1誕生
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突然ですが、皆さんは掛けていることを忘れるほど、違和感のないメガネを掛けたことはありますか?

メガネの使い心地や見え方には、多かれ少なかれ、悩みはつきもの。
特に遠近両用メガネは、掛け始めてはみたものの、なかなか慣れることができない、という方も多いのではないでしょうか。

4月1日に発売になったばかりの、今回ご紹介する遠近両用レンズ【スペリオール P-1】は、今お掛けのメガネの見え方に何かしら不満のある方、より快適な視生活を追求したいとお考えの方にピッタリの商品です。

スペリオール P-1の<SUPERIOR>とは、<Super(=超)Indviual(個別)Oriented(=志向)>の略を表しています。つまり究極のカスタムメイドレンズということ。

一人ひとりに合わせて「1mm」「1度」にこだわって調整し、最適な視界を実現する・・・今回はそんなレンズの企画~開発を手がけたプロジェクトチームのリーダー岩崎にインタビューしました。

今回発売された「スペリオール P-1」は、「最高峰カスタムメイド遠近両用レンズ」ということで、名前を聞くとすごく高級そうな感じがしますが、どのようなコンセプトで作られたレンズなのですか?

セイコーオプティカルプロダクツ(株)マーケティング部ゼネラルマネージャー岩崎淳の写真

セイコーオプティカルプロダクツ(株)
マーケティング部ゼネラルマネージャー
岩崎 淳

大きく分けて2つあります。
1つは、現在考えられる技術の粋を結集した最高峰のカスタムメイドレンズを作りたいということ、もう1つは、最高峰のレンズをお客様一人ひとりに合わせて最適に調整して提供する仕組みを作ろうということです。

レンズ自体がいくら良くても、お客様それぞれの処方や顔の幅、フレームの角度、ライフスタイルなどに合わせて細かく調整できなければ、快適な視界を実現することはできません。当社の持つ最高の技術を、お客様一人ひとりに合わせて最も効果的にお届けできるようなレンズを作りたいという考えの元に開発いたしました。

なるほど。そのような考えに至った背景は何だったのでしょうか。

これまでも、その時々の最高の技術を尽くしたトップエンドのレンズはありました。ただ、お客様に合わせた調整の部分でカスタムメイドの良さが十分に生かされていない状況がありました。
技術はあるのにそれを100%お届けできない、という状況を改善したい、という考えがありました。
また、当社は技術の面では業界をリードしていると自負していますが、調整する仕組みの部分でも更に良いものを作って欲しい、というお客様や眼鏡店様からのご要望も頂いていました。

最高の技術とそれを一人ひとりに合わせて最適に調整する仕組み・・・
「スペリオール P-1」には2つの大きな特徴があることがわかりましたが、具体的にはどのようなところが変わったのでしょうか。

まず、レンズの技術的な部分についてお話いたします。メガネを装用した時のフレームの傾きかげんを「前傾角」といい、通常は10度くらいの傾きになるように調整されています。ほぼどこのメーカーのレンズもこの前傾角は10度ぐらいであることを前提に作られています。

ところが、鼻や耳の位置は人によってそれぞれ違いますので、同じメガネをかけても、前傾角は一人ひとり違ってきます。また、同じ人でも選ぶフレームによってフレーム自体の傾き方が違いますので、前傾角は変化します。

つまり「前傾角」は人それぞれ違っており、極端にいえば20度の人もいれば0度の人もいるのです。

前傾角は、鼻や耳の位置、装用するフレームなどで変化します。
前傾角最適補正ありなしの収差図

※上の図は前傾角別のレンズの見え方を「前傾角最適補あり」「前傾角最適補なし」それぞれの場合について示したものです。濃い青色の部分がユレ・ユガミのない視野の部分です。

その角度の違いを合わせるのに、これまではフレーム側の調整で対応をしてきました。
ただ、メタルフレームの場合は割合調整し易いのですが、プラスチックフレームやインポートフレームの一部には角度の調整が難しいものがあり、前傾角の調整が十分にされないまま掛けるか、フレームの種類を変えるしかありませんでした。前傾角が十分調整できずに、基準となる10度からずれたままですと、良好な見え心地ではなかったわけです。

それが、今回レンズ側のカスタマイズによって、0度から20度まで1度刻みで、一人ひとりで異なる前傾角に合わせることが可能になりました。
これを「前傾角最適補正」と呼んでいます。

フレームの種類に関わらず、自分の前傾角にぴったり合ったメガネレンズを作ることができるようになったのですね。
他にはどんな点がありますか?

様々な点で、細かく調整したり、種類を選んだりできるようになりました。

例えば、最近はフレームの上下幅が狭いものが人気ですが、遠近両用レンズには、遠くを見る部分と近くを見る部分があります。
その中間は度数が徐々に変化していく部分で累進帯といいます。
あまり上下幅の狭いフレームを選ぶと、近くを見る部分が切れてしまうこともあります。

フレーム天地幅(遠用部+累進帯長+近用部)の図解

※お選びのフレームに併せて累進部の長さを10mmから18mmまで1mm単位で調整できます。

このスペリオールP-1は10mmから18mmまで、1mm刻みで累進帯の長さをご用意しておりますので、お客様が選ばれたフレームの上下幅に対して最適な長さの累進帯長が選択できます。
累進帯は短すぎますと、度数変化が急になり、ユレ・ユガミを感じやすくなることもありますので、そういう場合は、フレーム上下幅に収まる範囲でなるべく長い累進帯を選ぶことが重要です。
このスペリオール P-1ならばそのようなご要望にも応えることができます。

他にも、遠くをより広く見るか、手元に重点をおくかなど用途に合わせて、基本設計を3タイプから選べたり、個人差のあるお手元の作業距離に合わせたカスタマイズが可能になっています。

いくつもの条件を細かく設定することが可能になったということですが、一人ひとりに合わせてどのように最適な設定を選ぶのでしょうか。

先ほど、お客様一人ひとりに合わせて最適に調整する仕組みを作ったというお話をしましたが、今回、お客様の様々な情報を入力すると、自動的に最適なレンズを導き出してくれるソフトウェアを作りました。眼鏡店様のパソコンに入れてお使いいただくのですが、導入していただいたお店では、お客様の視力測定をしながら、前傾角、度数、フレームカーブや、これまでお使いのレンズ、ご不満に感じるポイント、使用目的など様々な情報を入力していきます。
すると、そのお客様に最もお勧めのレンズを選び出し、その内容をカルテのような形で印刷します。
それを見ながら、他に検討が必要な要素があればそれも含めて考え、最適と思われるレンズを決めることができます。

ソフトウェアを映し出したパソコン画面の写真

コンピューターの力で、どなたにも最適なレンズを選び出すことができるのですね。きっととても複雑な計算がされているのでしょうね。

そうですね。その詳細は企業秘密であり、お話できないのですが、やはり、今までお掛けになっていたレンズに対する不満点、ご使用環境などの定性的情報をどのように数値情報に換算し、反映させるかという点はとても苦労しました。

「スペリオール P-1」は遠近両用レンズですが、遠近両用というと通常のメガネと見え方が違うので、慣れるまでに苦労をする、という話を良く聞きます。そのあたりはどのような工夫がありますか?

「スペリオール P-1」は、セイコーが開発した遠近両用レンズの先進技術、ハイブリッドテクノロジーを採用しています。
遠近両用の悩みといえばユレ・ユガミになかなか慣れることができないというのが代表的ですが、ハイブリッドテクノロジーはこれまでのレンズに比べ、視野が広く、ユレ・ユガミの極めて少ないレンズです。

これまでの遠近両用レンズでは、レンズの外側と内側の2つの面を処理して度数を出していました。度数を決定する要素が分散していたことで、ユレ・ユガミを生じ易い構造になっていた訳です。

ハイブリッドテクノロジーではレンズ内側のみを処理することで、ユレ・ユガミを少なくできました。レンズの内側面のみで累進度数、乱視度数等全ての度数要素を融合して実用化したのは、セイコーが世界初です。

ハイブリッドテクノロジーについて詳しくはこちら↓
https://www.kaiteki-eye.jp/products/column_87/

遠近両用レンズでも、最高の技術を用いているということですね。さて、その様な「スペリオール P-1」ですが、快適に使用するためのお手入れや使い方の注意点はありますか?

まず、第一に掛けているのを忘れないようにすることです。嘘のような話ですが、実際私は、掛けていることを忘れ、洗顔しかけたこともありました。
他には、「スペリオール P-1」だから特別に、ということはなく、高温の場所に放置しない、片手で掛け外しをしない、など他のメガネにも言える基本的なことが大切ですね。また、遠近両用レンズは特にレンズと瞳の位置が正しく合っていることが重要です。
フレームの歪み等で、レンズ位置がずれてきたら、眼鏡店様でフィッティングをし直してもらってください。

この「スペリオール P-1」は、どの様な人に掛けてもらいたいですか?

老視の方ならどなたにでも掛けていただきたいですね。
特に遠近両用レンズを既にお使いの方で、見え方にこだわりのある方、今のレンズに不満のある方には是非試してみていただきたいと思います。
老視が強くなり、ユガミが気になる方には特にお勧めします。
私も老視になってすぐはメガネを掛けていませんでしたが、初めて遠近両用レンズを掛けた時はその自然な見え方にとても感動しました。
やがて段々とその感動は慣れて薄れていきましたが、最初のインパクトはとても大きいものでした。
そのような感動を一人でも多くの方に味わってもらいたいと思っています。

実際に購入するにはどこに行けばよいのですか?

販売先は限定しておりませんので、基本的にはお近くの眼鏡店様どこでもお取り扱いいただけます。眼鏡店様の方にセイコーのスペリオールP-1を欲しいと、お伝えいただければ、ご購入いただけると思います。
万が一、お近くの眼鏡店様で購入することができない場合は、当社のお客様相談室にご連絡ください。
取り扱いのある眼鏡店様をご紹介いたします。

今回は「スペリオール P-1」の魅力をたっぷりと伺い、使う人の視生活を快適にする商品、ということが分かりました。
今後はどのような商品を作っていきたいですか?

そうですね。自然な見え心地をもっと追求して行きたいと思います。
そして、これまでにも増してお客様の声を伺い、反映した商品を作っていきたいです。
例えば、パソコン用など用途別のレンズにもこれまで以上に何か望まれる要素があればそれを取上げて商品化していきたいと思います。
メガネは医療機器でありながら、ファッションアイテムでもあり、色々な要素が含まれた奥の深い商品です。いくつもの要素を融合させ、掛けた人が本当に満足のできる商品を作っていきたいと思います。

いかがでしたか?心地よい視界は、毎日を楽しく過ごすためにとても大切なもの。皆さんも自分に合ったレンズを選んで、快適な視生活を送ってくださいね。

[2009.5.13 UP]