快適視生活応援団目とメガネに関する豆知識メガネ選び メガネ選び > シニアレンズ選びのポイント

目とメガネに関する豆知識
老眼鏡という言葉が、「老い」を感じる後ろ向きな言葉であるため、もっと前向きな視生活を楽しむイメージのある言葉がないかと以前から検討されてきました。
欧米ではREADING GLASSES、つまり読書用眼鏡という呼ばれ方もします。
しかし、使われるシーンは読書だけでなく、パソコンの画面を見るための眼鏡や、ショッピングで値札や注意書きなどがよく見えるための眼鏡など、さまざまな生活シーンで、単に遠視、近視、乱視といった屈折異常を眼鏡レンズで屈折補正するだけでなく、そこから、あるいはそれに加えて近距離を見るために、レンズのパワー(レンズ度数とも呼ばれています)を変え、作られた眼鏡が、多くの人の視生活をより快適にしています。
これらのレンズを総称して「シニアレンズ」と呼んでいます。


■ピント調節機能を補う

シニアとは、「年長の」といったような意味を持ちますが、眼は、加齢するにしたがってピント調節をする機能が減退していきます。
詳しくは「老眼は誰でもなる」ご参照ください。
ピント調節機能が十分あるときは、近視などの屈折補正をして遠くがはっきり見えるようにすれば、遠くから近くまで、どの距離でもはっきり見えます。
しかし、この機能が低下すると、遠くがはっきり見える眼鏡(屈折異常のない場合は眼鏡を掛けていない状態)では、必要な近くの距離までピント調節機能が及ばなくなって、ぼやけたり、無理をして疲れたりします。

これを解消するためには、レンズのパワーを変化させ、ピント調節を補う方法があります。
眼の中にはピント調節を行う水晶体レンズがあり、若い方の水晶体レンズはパワーを思い通りに変化させることが可能で、眼鏡レンズにもそのようなレンズがあれば理想的です。しかしながら現在はまだ、そのようなレンズは実用段階にありません。代わりに、ひとつのレンズの中で部分部分ごとにパワーを変化させるように作り、レンズ上を視線移動させることで、必要な距離に応じた適切な屈折補正が得られるように設計したレンズが広く普及しています。
これには、レンズのパワーを連続的に変化させる累進屈折力レンズ(略して累進レンズ)と、2つあるいは3つの焦点をもつように設計された多焦点レンズがあります。
◆累進屈折力レンズ
◆多焦点レンズ
■累進レンズ選びのポイント

累進レンズは、必要な距離に応じて適切な位置に視線を移動させて、眼鏡の掛け外しや、眼鏡を掛け替えることなく必要な距離すべてが見える便利なメガネです。
しかし、適切な位置を視線が通らないといけないため、使う人の理解と慣れや、調製する人の高い技術が不可欠となります。

例えば、しっかりと掛け具合が調整されていない眼鏡だと、ずれて設計どおりに視線がうまく移動できなくなります。また、どの距離でどの視線を使うかを、適切に考慮してレンズの中心をどこへ持っていくかを考え、加工調製しなければなりません。
さらには、広い距離範囲をカバーする眼鏡ほど、レンズの部分部分のパワーを変化させる度合が大きくなるため、適切な視線通過位置の範囲が限られてきます。そのため、現在ではいろいろな設計のレンズがあり、その人の屈折状態、仕事の内容、くせなどいろいろな点を総合的に判断して、ひとりひとり、また、使用する生活シーンに合ったレンズを選択していくことが、大切です。
そのためには、より快適に視生活がエンジョイできるレンズ選択、加工調製、フレーム選択とそのフィッティング、使い方のアドバイスなどができる専門知識と技術をもった眼鏡技術者と相談されることをお勧めします。

監修:日本眼鏡技術者協会教育部担当副会長 木方 伸一郎