この連載は、お茶の水・井上眼科病院 若倉雅登院長にお願いしています。
「1.子供の視力の測り方」
「2.子供の視力の発達」
「3.子供のうちからメガネなんて」
「4.弱視とメガネ」
連載2回目の今回は、「子供の視力の発達」です。
子供の視力の測り方については前回触れましたが、今回は、実際の詳しい測り方や、
そこで得られた視力は真の視力なの?といったところまで、踏み込んだ内容になっていますよ。
~子供の視力の発達~
▽1.いつから見えるの?
生後すぐの赤ちゃんはどの程度見えるのでしょうか?もう目の構造はほぼでき上がっており、光はもちろん、細い縞模様にも視反応が あることがわかっています。種々の方法で、その後の視力の発達が調べられています。
この場合の視力とは、メガネで正しく矯正した矯正視力をさします。
研究者や測定手段により多少の差はありますが、生後1歳で、0.1から0.4 くらいの視力はあるとするデータが多いようです。中には生後6ヶ月でほぼ大人に 匹敵する1.0の視力が出ているとするデータもあるのです。2歳ではどの研究者も0.2~0.4以上の視力を確認しています。
▽2.どのようにして測ったの?
しかし、普通の視力検査ができない乳幼児。 いったいどうやって調べることができたのでしょう。
○選択視法・PL法
白黒反転する格子縞をみせて後頭葉視中枢の脳波(視覚誘発脳波)を利用したり、左右の穴のどちらかに、輝度を同じにした縞模様を出して、乳幼児がそれに注目したかどうかを判定する選択視法またはPL法、などが一般的です。
○線路眼振を利用した測定法
走行中の電車から外の景色を見ている人に生ずる目のゆれを線路眼振といいますが、これを利用した視力測定法もあります。
また、3歳半から4歳になると絵視標やカード式の視力検査や、ランドルト環による大人と同じ視力検査が練習によりできる場合もあります。
視力検査の時用いるC型の視標のことです。大きめのCをボール紙で作り、これを持たせて書かれているCと同じ方向に合わせる練習を家でしておき、実際の視力検査に臨むと正しい結果が得られます。
▽3.子供の視力の評価とメガネ
では、得られた子供の視力は、真の視力なのでしょうか?
0.4という結果は、多くの場合「0.4しか見えない」こととは異なるのです。「少なくとも0.4は見えている」と解釈すべきです。
つまり、乳幼児に大人と同じ集中力を要求するのは無理ですし、何のために面白くもない視力検査をするのか理解させようとしてもわかるはずがありません。
しかし、屈折検査、つまり近視か遠視か乱視かを判定する検査では、客観的な数字が得られます。もちろん泣いて目を開けてくれないとこの検査もできませんが、最近は乳幼児の興味を惹きながら検査が出来る器械もあり、大抵の子供に検査が可能になりました。
それで強い遠視や近視、乱視が見つかったり、左右の目で大きな差のある結果が得られたりしたときは、早めに屈折矯正、すなわちメガネの装用が医学的に必要ということになります。
それは、視力の発達を促すためばかりでなく、両目で見る機能(両眼視機能)を育てるのにも必要だからです。このことは、また次回に詳しく解説することにしましょう。
井上眼科病院院長 若倉雅登
●井上眼科病院ホームページはこちらから
→ http://www.inouye-eye.or.jp/