快適視生活応援団目とメガネに関する豆知識目の健康 視力 > ▽連載▽ 子供の目について [3]子供のうちからメガネなんて編

目とメガネに関する豆知識

この連載は、お茶の水・井上眼科病院 若倉雅登院長に書いていただいております。

「1.子供の視力の測り方」
「2.子供の視力の発達」
「3.子供のうちからメガネなんて」
「4.弱視とメガネ」

以上の4回の連載でお届けする、若倉院長の「子供の目についての豆知識」。
連載3回目の今回は、「3.子供のうちからメガネなんて」です。

「子供のうちからメガネはかけさせたくない」
誰もが思うことかもしれませんが、子供のうちにぼやけた像でものを見ていると・・・
その影響は視力以外のところにも及ぶようなんです。

「見える」ということの意味、コラムを読めば、その奥深さを感じることができそうです。


~子供のうちからメガネなんて~

▽1.メガネをかける理由

強い近視や遠視、乱視や、屈折に左右の目で大きな差がある場合には、医学的意味でメガネをかけなければならない、ということを前回書きました。そのような説明をしますと、大半のご両親は、「子供のうちからメガネはかけさせたくない」と抵抗を示します。どうやら、簡単な説明では、ご納得いただけそうもないので、今回はこのことについて、やや詳しく解説することにしましょう。

▽2.視力は視覚刺激を得て発達する

生まれたばかりの赤ちゃんでもすでに明確な視反応があります。
視覚誘発脳波を用いた研究では、生後2、3ヶ月のうちに成人の視力と同じレベルに達するとされます。

しかし、ものは見えていても、その意味はわかりませんから、成人と同じレベルの視力とは言い難いでしょう。

つまり、生後数ヶ月で、網膜から脳までの視路といわれるルートはほぼ完成するのですが、「見える」という概念は、見えたものの意味がわかる、つまり認識するという過程を含むものなのです。

ものは目で見えている、と考えている方が多いと思いますが、実は大脳皮質で認識してはじめて物が見えた(理解できた)ことになります。大脳皮質の80%以上の部位が視覚からの情報を認識したり、処理することに関係しています。ということは、人間にとって、視覚というのは、大脳を発達させる上で非常に大切な情報源になっているとも言えるわけです。

視機能は視力だけでなく、視野、色覚、光覚(暗いところで微小な光を検出する機能)など、いろいろな方法で測定されますが、視覚にはそれだけいろいろな要素があるということです。それらは、目からの視覚入力があって初めて発達してゆくものなのです。

特に生まれた直後から3歳を過ぎるころまでが急速な発達時期です。この大事な時期に、もしぼやけた入力しかなかったら、大脳皮質での認識、処理機構はそのぼんやりした像をもとにして発達することになりますから、当然その質は悪いものになるでしょう。

視機能ばかりでなく、脳全体の発達にも影響を与える可能性さえあるのです。

▽3.質の悪い像で育つと・・・

では、大事なときにぼんやりした像で育つと、実際どういうことになるのでしょう。

医学的にいうと、「弱視」という状態になる可能性があります。
医学的弱視にはいろいろな種類があります。ひとつ例を挙げてみましょう。

強い遠視と乱視があったとします。でも気付かずに、あるいは眼科医などに指摘されたのに、メガネをかけずに育ったとします。そうすると、あとからメガネをかけるようにしても、目そのものは正常なのに十分な視力が出にくい状態になります。これが、「屈折性弱視」と呼ばれるものです。脳の80%以上を占める視覚入力に関係する大脳皮質が、生後に十分発達できなかった結果なのです。

3歳くらいまでに、視力が発達すると書きましたが、それまでにメガネをきちんとかけなかった屈折性弱視の子供は、もう救えないのでしょうか?

大丈夫です。
9~10歳くらいまでは、子供の脳は柔軟性があり、まだ発達する潜在力がありますから、それまでに正しい矯正レンズをかけることにより、少々遅ればせながら、視機能の発達を促せる可能性があります。屈折性弱視は、弱視のうちでも、治りやすいものです。

他の弱視、これは少し治りにくいものもありますが、それについては次回触れることにいたしましょう。


井上眼科病院院長 若倉雅登

 ●井上眼科病院ホームページはこちらから
    → http://www.inouye-eye.or.jp/