商品選びのポイント~「フレーム編」、「レンズ編」~
眼鏡は視力を補正するとともに、常に顔の上に掛けているわけですから、ネクタイを選んだりアクセサリーを選んだりするのとは基本的な違いがあります。
今回は、その選び方のポイントをフレームとレンズに分けてお話しましょう。
【 フレーム選び 】
顔に掛けて似合うかどうかや、ブランドの良し悪しなどは個人的な評価が異なると思われますので、ここでは機能と材質の面を中心に考えてみます。
1)軽いめがね、重いめがね
眼鏡は1日中顔に掛けているものですから軽い方がよいとするのは当然です。最近、軽量の眼鏡が発売されていて、重量が3グラムとか5グラムといったものも入手可能になりました。ただ、フレームを選ぶとき、これから自分が使用することになる度数のレンズが入っていませんので、フレームだけを掛けた時は、ごく軽く感じるかもしれません。
もし実際に使用するレンズの度数が強い場合は、さらに重くなり、厚みも増します。それ故に、レンズを入れたときフレームの前方の部分だけが重くなり、鼻や耳に負担がかかる場合があります。従って、ある程度度数の強い方には、ただ軽いフレームよりも、眼鏡のつるの部分もしっかりしていて、十分な長さのあるものが求められます。その点は、担当する販売員に詳しくお尋ねになることが必要です。
2)材質によるアレルギーは起きないか?
フレームの金属部分や樹脂の部分が皮膚に接触して、アレルギーを起こす場合があります。最初は大丈夫でも、使用しているうちにメッキや表面部分が劣化していきます。その劣化した金属の地肌が皮膚に触れることにより、炎症が起きるわけですが、特にニッケルを用いた合金の場合に多くみられます。この様な場合には、ニッケルを用いていない材質のものが望ましく、最近ではチタンを使ったフレームが炎症を起こしにくいとされています。また、K18金は比較的安全ですが、それでも金属アレルギーを起こしやすい方は要注意です。
フレームのつるの先端部分(耳に触れる部分)は樹脂で出来たカバーで覆われていますが、これにも敏感に反応する方がいます。この部分は取替えが可能ですので、かゆくなったり、赤くなったりする場合は取替えが必要です。
≫フレーム素材と金属アレルギーについての詳細はこちら
3)サイズは適切か?
最近は、上下幅が狭く細いフレームが多くなりました。このこと自体は、レンズが小さくなることにより軽量化が図られるメリットもあり、視野が狭くなる欠点を除けば特に問題にはなりません。但し、フレームの横幅は顔の幅にあったものが良いでしょう。あまり狭くてこめかみの部分を圧迫するようなものは避け、逆にフレームの横幅が広すぎて、顔との間に広い隙間が出来てしまうものも望ましくありません。
また、つるは十分長く、耳にしっかり掛かるもの、ブリッジの部分は鼻の形に合って、汗をかいてもずれにくいものを選ぶ必要があります。特に、外国製の樹脂のフレームは鼻のパッドが小さく、日本人の鼻幅に合わないものがありますので注意しましょう。
【 レンズの選択 】
1)レンズの種類
原則として年齢が40歳未満で、近視、乱視、遠視であれば、まず単焦点レンズを選び、度数が比較的弱ければ(±2.00D未満)、球面レンズを選びます。度数がそれより強くなれば、レンズの周辺を通してみた場合の像の歪みを減らしレンズ周辺の厚みを薄くするため非球面設計を施したレンズが望まれます。
また、40歳以上の方で老視が入ってきた人は、手元だけが見える、いわゆる「老眼鏡」(近用眼鏡)を選ぶか、遠近両用レンズを選ぶか、又はその双方を購入するかを決定することになります。遠近両用レンズをさらに分類すれば、外出や車の運転にも使える「遠―中―近の汎用タイプ」、「室内用の中近タイプ」、パソコンを中心とした「30cm~1m位の範囲で使う近近タイプ」に分かれます。これらのレンズはその方の老視の度数の強さや調節力によって見える範囲や幅が異なってきますので、眼鏡店でテストレンズによる見え方などを十分体験して、比較決定することが大切です。
これらの遠近両用レンズは、専門的に「累進屈折力レンズ」と呼ばれますが、累進帯(遠用から近用度数へ変化する累進部)の長さや、累進度数をレンズの外面につけるか、内面につけるか、又は両面につけるかで、様々な設計上の特長があります。販売員の十分な説明を聞いて選択されることが大切です。
このような累進屈折力レンズに対して、遠用と近用部、更には中間部の間に明瞭な境界線が入るレンズを「多焦点レンズ」と言い、二重焦点、三重焦点レンズなどがあります。累進屈折力レンズの欠点であるゆれや、視野の狭さに慣れない方は、多焦点レンズを試されることも1つの選択肢です。
2)屈折率
レンズの材質には大きく分けてガラスレンズとプラスチックレンズがあり、それぞれ屈折率(その素材が光をどれだけ屈折させる能力があるかということを示すための、その素材固有の値)によって、レンズの厚みが変化します。
一般にガラスレンズの方がプラスチックレンズより薄くできますが、重量が重くなり、最近では販売される90%がプラスチックレンズであるといわれます。屈折率が高くなるほどレンズは薄く出来ますが、屈折率が高くなるとレンズ周辺の色収差(レンズを通して物体の像を結ぶ時、その像の位置・大きさが光の波長によって異なること)が強くなり、周辺を通して見るときに像が不鮮明になったり、色がついて見えたりしますので、度数の強さによって、適当な屈折率のレンズを選ぶことが賢明な方法といえましょう。
また、度数の強い方は、屈折率のみでなく、フレームを小さくすればそれだけレンズは薄く、軽くできますので、レンズの選択と同時にフレームの選択も重要なポイントとなります。
3)コーティング
レンズのコーティングは基本的に2種類あり、1つはレンズ表面での光の反射を減らす「反射防止コーティング」とレンズ表面の傷を防ぐ「ハードコーティング」があります。「ハードコーティング」は「プラスチックレンズ」のために開発されてきましたが、年々改良されて、摩擦によるこすり傷には相当丈夫なコーティングが出来るようになりました。
その他に、レンズ表面の汚れがふき取りやすい撥水コートや衝撃に強いコーティングも開発されています。さらに、こすり傷だけではなく、熱によるコート膜のはがれにも強いコーティング技術も開発されています。この技術によれば、プラスチックのような樹脂に金属粉を高熱で真空蒸着する通常のコーティングではコート膜が剥れやすい欠点があったものを、樹脂と金属粉との間に、もう1つの有機層を作ってコート膜の密着性が一段と改良されております。
しかし、それぞれのコーティングのレベルにより価格も異なり、お客様の眼鏡の取り扱い方、使用する環境(ホコリが多いか、仕事や趣味で熱を使うかどうかなど)に応じて必要なコーティングを選択することが望まれます。
≫コーティングについての詳細はこちら
以上のように、フレームやレンズの選択にはそれぞれ専門的な知識が要求されますので、眼鏡についてのきちんとした知識・技術を持っている店員に、よく相談されることが大切です。そのお店選びのひとつの指標として、以前にご説明した「認定眼鏡士」のいるお店を選ばれてみてはいかがでしょうか。
≫「「眼鏡店」の選び方と認定眼鏡士制度」の豆知識はこちら
監修:日本眼鏡技術者協会会長 津田節哉
日本眼鏡技術者協会 ウェブサイト
今回は、その選び方のポイントをフレームとレンズに分けてお話しましょう。
【 フレーム選び 】
顔に掛けて似合うかどうかや、ブランドの良し悪しなどは個人的な評価が異なると思われますので、ここでは機能と材質の面を中心に考えてみます。
1)軽いめがね、重いめがね
眼鏡は1日中顔に掛けているものですから軽い方がよいとするのは当然です。最近、軽量の眼鏡が発売されていて、重量が3グラムとか5グラムといったものも入手可能になりました。ただ、フレームを選ぶとき、これから自分が使用することになる度数のレンズが入っていませんので、フレームだけを掛けた時は、ごく軽く感じるかもしれません。
もし実際に使用するレンズの度数が強い場合は、さらに重くなり、厚みも増します。それ故に、レンズを入れたときフレームの前方の部分だけが重くなり、鼻や耳に負担がかかる場合があります。従って、ある程度度数の強い方には、ただ軽いフレームよりも、眼鏡のつるの部分もしっかりしていて、十分な長さのあるものが求められます。その点は、担当する販売員に詳しくお尋ねになることが必要です。
2)材質によるアレルギーは起きないか?
フレームの金属部分や樹脂の部分が皮膚に接触して、アレルギーを起こす場合があります。最初は大丈夫でも、使用しているうちにメッキや表面部分が劣化していきます。その劣化した金属の地肌が皮膚に触れることにより、炎症が起きるわけですが、特にニッケルを用いた合金の場合に多くみられます。この様な場合には、ニッケルを用いていない材質のものが望ましく、最近ではチタンを使ったフレームが炎症を起こしにくいとされています。また、K18金は比較的安全ですが、それでも金属アレルギーを起こしやすい方は要注意です。
フレームのつるの先端部分(耳に触れる部分)は樹脂で出来たカバーで覆われていますが、これにも敏感に反応する方がいます。この部分は取替えが可能ですので、かゆくなったり、赤くなったりする場合は取替えが必要です。
≫フレーム素材と金属アレルギーについての詳細はこちら
3)サイズは適切か?
最近は、上下幅が狭く細いフレームが多くなりました。このこと自体は、レンズが小さくなることにより軽量化が図られるメリットもあり、視野が狭くなる欠点を除けば特に問題にはなりません。但し、フレームの横幅は顔の幅にあったものが良いでしょう。あまり狭くてこめかみの部分を圧迫するようなものは避け、逆にフレームの横幅が広すぎて、顔との間に広い隙間が出来てしまうものも望ましくありません。
また、つるは十分長く、耳にしっかり掛かるもの、ブリッジの部分は鼻の形に合って、汗をかいてもずれにくいものを選ぶ必要があります。特に、外国製の樹脂のフレームは鼻のパッドが小さく、日本人の鼻幅に合わないものがありますので注意しましょう。
【 レンズの選択 】
1)レンズの種類
原則として年齢が40歳未満で、近視、乱視、遠視であれば、まず単焦点レンズを選び、度数が比較的弱ければ(±2.00D未満)、球面レンズを選びます。度数がそれより強くなれば、レンズの周辺を通してみた場合の像の歪みを減らしレンズ周辺の厚みを薄くするため非球面設計を施したレンズが望まれます。
また、40歳以上の方で老視が入ってきた人は、手元だけが見える、いわゆる「老眼鏡」(近用眼鏡)を選ぶか、遠近両用レンズを選ぶか、又はその双方を購入するかを決定することになります。遠近両用レンズをさらに分類すれば、外出や車の運転にも使える「遠―中―近の汎用タイプ」、「室内用の中近タイプ」、パソコンを中心とした「30cm~1m位の範囲で使う近近タイプ」に分かれます。これらのレンズはその方の老視の度数の強さや調節力によって見える範囲や幅が異なってきますので、眼鏡店でテストレンズによる見え方などを十分体験して、比較決定することが大切です。
これらの遠近両用レンズは、専門的に「累進屈折力レンズ」と呼ばれますが、累進帯(遠用から近用度数へ変化する累進部)の長さや、累進度数をレンズの外面につけるか、内面につけるか、又は両面につけるかで、様々な設計上の特長があります。販売員の十分な説明を聞いて選択されることが大切です。
このような累進屈折力レンズに対して、遠用と近用部、更には中間部の間に明瞭な境界線が入るレンズを「多焦点レンズ」と言い、二重焦点、三重焦点レンズなどがあります。累進屈折力レンズの欠点であるゆれや、視野の狭さに慣れない方は、多焦点レンズを試されることも1つの選択肢です。
2)屈折率
レンズの材質には大きく分けてガラスレンズとプラスチックレンズがあり、それぞれ屈折率(その素材が光をどれだけ屈折させる能力があるかということを示すための、その素材固有の値)によって、レンズの厚みが変化します。
一般にガラスレンズの方がプラスチックレンズより薄くできますが、重量が重くなり、最近では販売される90%がプラスチックレンズであるといわれます。屈折率が高くなるほどレンズは薄く出来ますが、屈折率が高くなるとレンズ周辺の色収差(レンズを通して物体の像を結ぶ時、その像の位置・大きさが光の波長によって異なること)が強くなり、周辺を通して見るときに像が不鮮明になったり、色がついて見えたりしますので、度数の強さによって、適当な屈折率のレンズを選ぶことが賢明な方法といえましょう。
また、度数の強い方は、屈折率のみでなく、フレームを小さくすればそれだけレンズは薄く、軽くできますので、レンズの選択と同時にフレームの選択も重要なポイントとなります。
3)コーティング
レンズのコーティングは基本的に2種類あり、1つはレンズ表面での光の反射を減らす「反射防止コーティング」とレンズ表面の傷を防ぐ「ハードコーティング」があります。「ハードコーティング」は「プラスチックレンズ」のために開発されてきましたが、年々改良されて、摩擦によるこすり傷には相当丈夫なコーティングが出来るようになりました。
その他に、レンズ表面の汚れがふき取りやすい撥水コートや衝撃に強いコーティングも開発されています。さらに、こすり傷だけではなく、熱によるコート膜のはがれにも強いコーティング技術も開発されています。この技術によれば、プラスチックのような樹脂に金属粉を高熱で真空蒸着する通常のコーティングではコート膜が剥れやすい欠点があったものを、樹脂と金属粉との間に、もう1つの有機層を作ってコート膜の密着性が一段と改良されております。
しかし、それぞれのコーティングのレベルにより価格も異なり、お客様の眼鏡の取り扱い方、使用する環境(ホコリが多いか、仕事や趣味で熱を使うかどうかなど)に応じて必要なコーティングを選択することが望まれます。
≫コーティングについての詳細はこちら
以上のように、フレームやレンズの選択にはそれぞれ専門的な知識が要求されますので、眼鏡についてのきちんとした知識・技術を持っている店員に、よく相談されることが大切です。そのお店選びのひとつの指標として、以前にご説明した「認定眼鏡士」のいるお店を選ばれてみてはいかがでしょうか。
≫「「眼鏡店」の選び方と認定眼鏡士制度」の豆知識はこちら
監修:日本眼鏡技術者協会会長 津田節哉
日本眼鏡技術者協会 ウェブサイト